ワールドカップ2026振り返りーその1(W杯観戦記その37)
W杯が終わってから10日近くがたってしまった。もっと早く総評的振り返りをポストしようと思っていた。何十本もの分析・評価の動画を見たり、さらに多くのメディアやSNS上の記事を読んだりしているうちに自分自身の意見がわからなくなってしまった。
ともあれ、他人の意見ではない、自分の見たW杯をサッカーの内容、大会を取り巻く諸状況、日本代表の戦いに分けて振り返る。
(注:前回カタール大会では、64試合中52試合をリアルタイム観戦したが、今回は104試合中の56試合をリアルタイム観戦したにとどまった。(後はロング・ハイライトを見た。)試合数は増えたが、観る方にとっては時差も含めてよりハードな観戦日程になっているし、メキシコに現地観戦した前後はリアルタイム観戦をほとんどできなかった。もし、次回64チームに増えたら試合は128試合になるが、もはや体力が持ちそうにない。)
1. 大会前は、優勝候補No.1がフランス、No.2がスペインと予想していたが、今大会ではスペインの強さが際立ったように思える。初戦こそカーボ・ベルデに引分けと苦しんだが、決勝Tに入ってからは試合を重ねるごとにパ-フォーマンスが良くなり、各試合で負ける要素が感じられなかった。特に、準決勝のフランス戦は圧巻で、敵にサッカーをさせない快勝だったし、決勝のアルゼンチン戦も120分でシュート2本に抑え込むなど、スコアは僅差のようでも完勝に近いできだった。今大会のスペインは、ハイレベルな組織と個が融合してチームであり、真似しようとしても真似できないチームだが、現代サッカーの理想形を示したように思える(これが4年先も続くかはわからないが)。ボールを保持し続け、失ってもピンチに陥らないポジション取りができていて、ボール奪還が速く、常に試合を支配続けることができた。8試合で失点1という記録は生半可ではない。スペインは、ユーロ2024、パリ五輪(2024)、女子ワールドカップ(2023)を制覇しており、今大会の主要メンバーの年齢を考えても、2008年から2012年の主要大会三連覇の時期のような黄金期が到来したと言えるかもしれない。
2.アルゼンチンは、優勝した前大会よりさらに「メッシのチームに」になっていた。「戦術メッシ」がさらにバージョン・アップされていた。同時に、この観戦記でも何度か書いたが、大会を通じてアルゼンチンは悪運に恵まれていたように思える。なぜかアルゼンチンに有利に転ぶ判定、見逃される汚いファウル、、、「メッシは好きだけど、アルゼンチンは嫌い」と思う世界のサッカー・ファンはかなり多かったようだ。逆にアルゼンチン人の中には、「大会中、アルゼンチンは世界からの憎悪を不当に受けていた」と考えた人もいたそうだ。
メッシのプレーとアルゼンチンの戦術を見ていると、2030年もまだ出場できるのではないかとさえ、思えてしまう。
3.参加国数が増えたことで、「各国間の格差が拡大するのではないか」、「一方的な試合が増えるのではないか」との懸念が大会前にはあったが、全試合見ていくと、そのような懸念は当てはまらなかったように思う。いわゆる弱小国の底上げがされており、予選リーグ最下位のチームでも、組織と戦術はそれなりにしっかりできていたと感じた。これは、多くの国の代表選手がヨーロッパなどレベルの高いクラブ・チームでプレーしており、また最先端のプレーや戦術が世界中どこでも簡単に動画で見ることができるようになったことによるのであろう。
今大会は、FIFAランク上の大番狂わせは怒らず、実力国が順当に勝ち上がっていったという印象が強い。個々の試合を観ても、「サッカーで勝って、試合に負けた」というような内容と結果に齟齬がある試合はほとんどなかったような気がする。それがなぜか、はよくわからないが、長丁場になり、試合のために長い移動を強いられた今大会は、勝つためにそれぞれの国の総合力がよりものをいうようになったのではないか。
4.3位のチームの3分の2が決勝Tに進めるという今大会の変則レギュレーションだが、各大陸別の決勝T進出状況を見ると次の通り。
アフリカ: 9か国/10か国出場(90%)
南米: 5か国/6か国出場(83%)
欧州 :13か国/16か国出場(81%)
北中米・カリブ:3か国/6か国(Host3国含む)出場(50%)
アジア: 2か国/9か国出場(22%)
オセアニア: 0か国/1か国出場(0%)
こうしてみると、アジアが一段、力が弱かったということになるだろう。リーグを突破した日本、豪州も決勝T1回戦で敗退した。アジア枠を減らせという声が出てきてもおかしくないが、FIFAの商売気を考えるとそうはなるまい。
5.大会のトレンドと言えるかどうか、今大会、耐えて守る戦術をとったチームは(特に決勝トーナメントで)悉くと言って良いほど、守り切ることができず失敗した。ブラジル対日本はその典型だが、他にもオランダ対モロッコ、イングランド対アルゼンチン、が挙げられる。(例外として、イングランドはメキシコ戦で一人少なくなって守りに転じて耐えきることができた。)
4バックを5バックに変え、ラインを下げて、守備を固めてもそれだけでは勝機は来ない。ボールを奪ったら、攻撃に転じる姿勢を見せなければ、押し込まれ放しになる。中央からの攻撃にはかぎを掛けられても、飛び込み続けるクロスにいつかは屈することになる。ブラジル戦後半の日本の戦い方はサッカーの女神に愛されない戦い方だったのかもしれない。
●今大会のベスト・マッチとベスト・ゴール
自分が選ぶベスト・マッチは、ベスト32のアルゼンチン対カーボ・ベルデ。カーボ・ベルデが前回世界王者に怯まず、勇敢に立ち向かい、2度のビハインドを追いついた。観ていて、胸が熱くなる試合だった。日本もこんな戦いぶりだったら、負けても納得したのだろうと思う。
ベスト・ゴールもこの試合103分のカブラルのゴール(FIFAの選んだものと同じになるが)。試合の状況、シュートの見事さといい、長く規則に残るゴールだ。
●ベスト・ドリブル
ブラジル戦の佐野海舟。センターライン前でパスカットし、ドリブルで敵陣を突き抜け、シュート、ゴールまで持ち込む一連のプレーは贔屓目抜きでも、最も印象に残る(結果にもつながった)ドリブルだった。
●ベスト・イレブン ―割とベタな選出となってしまったが次の通り。
GK ウナイ・シモン(西)
DF ククレジャ(西)、クバルシ(西)、ウパメカノ(仏)、ハキミ(モロッコ)
MF ロドリ(西)、ベリンガム(イングランド)
FW エムバペ、(仏)ハーランド(ノルウェー)、メッシ(亜)、
●大会MVP ロドリ(スペイン)
これも、FIFA選出と同じMVPになってしまった。万人に最もインパクトが強かったのは、やはりメッシだったと思う。しかし、チームが最高の座に上り詰めるために、チームを勝たせる役割を果たしたのはロドリが上だった。
(振り返りはまだ続きます。)
#ワールドカップ2026