ハートロッカーとグリーン・ゾーン

3月22日に映画「ハートロッカー」を、今日5月16日に「グリーン・ゾーン」を見に行きました。
どちらもイラク戦争を題材にした映画ですが、かなり内容もトーンも違います。

イラク戦争に関わり、バグダッドに勤務した身にとって、イラク戦争の映画というと無関心ではいられない。公開直後に映画館に行きました。

「ハートロッカー」は作品賞他、今年のアカデミー賞の6つを取った作品。全体的にヒリヒリするような感じのする、不安定なカメラアクションを多用する、見ていてかなりつらい映画です。部分的には、「こんなことはないな」と思うシーンもありますが、全体としては、イラクの雰囲気や危険な地に派遣される米兵の心理状況をかなり良く描写していると思いました。しかし、この映画はアカデミー賞を争った「アバター」などとは違って、万人向けの映画という感じはしません。優れた映画とは思いましたが、アカデミー賞作品賞というのは意外な気もしました。日本ではヒットした様子もないし。見た後に重たい気持ちになって帰る映画の方が評価されるのか。

グリーン・ゾーン」は、「ボーン・スプレマシー」のマット・デイモングリーングラス監督のコンビの作品。こちらの方は、今日見に行ったものの、はっきり言って期待外れでした。イラクのシーンはリアリティに欠けます。全然「それらしく」ないです。ハート・ロッカーはヨルダンで撮影していますが、グリーン・ゾーンはモロッコととスペインで撮影。これも、リアリティのなさの一因でしょうか。町や基地がちっともバグダッドらしくなかったです。大統領宮殿もそれらしくない、というより「それはない」という感じの描写。タイトルになっているグリーン・ゾーンもなぜタイトルになったかわからないような扱いでした。
ストーリーも詰まらないというか、陰謀も底が浅いし、他方でボーン・シリーズのようなサスペンス溢れるエンタテインメント性もなかったです。ハートロッカーと同様の手ぶれのするカメラアクションも成功していませんでした。

映画やテレビのフィクションで、リアリティということがよく問題にされます。しかし、リアリティというのは、本当のリアリティとリアリティらしさというのが、あるような気もします。実際に体験しないとわからないリアリティというのがあるのでしょうが、実際に体験していなければ、映像に真のリアリティがなくても、いかにも「リアリティ」がたっぷりあるように見えることもあるでしょう。
かくいう自分も戦闘しているわけではない文民ですから、米兵にとってのリアリティを本当の意味で理解しているとは言えませんが。