ワールドカップ2022観戦日記(ベスト・プレー集)

大会総評の前に、印象に残ったプレーやシーンの中からベストを選ぶ。

 大方の選ぶベスト・ゴールはブラジルのリシャルリソンのオーバーヘッドだろう。確かに素晴らしいゴールだったが、あのようなアクロバティックなゴールはヨーロッパのリーグでも、Jリーグでも、いや高校選手権でも見られるかもしれない。しかし、ワンツーを2回繰り返して、5人のディフェンダーが密集する地域をすり抜け、GKまでかわしてゴールする、こんな超絶技巧のゴールはこれからもなかなか見られないだろう。

 グループ・リーグでシュート速度が最速だった(おそらく大会一だろう)戦慄の一撃。今大会はFKから直接入ったのは、少なかったと思うが、近年のW杯を顧みてもこれほどのゴールはない。

 GKの伸ばした手を超える圧倒的な高さのヘディング。写真で見ても驚かせるほどの一撃。クロアチア対日本戦のペリシッチのゴールも素晴しかったが、守備側の寄せが甘かったこともあり、次点。

  • ベスト・デザインド・セットプレー(オランダ:対アルゼンチン戦)

 試合終了間際、敵チーム選手だけでなく、観戦していた誰もが想像していなかったような、意表を突くグラウンダーのパスからのシュート。観ていて思わず声を出してしまった。隠し持っていたタマをここで出したのか、と感嘆。ベスト・サプライズ・ゴールにも認定。

  • ベスト・パス:メッシ(アルゼンチン:対オランダ戦)

 美しいスルーパスが通るのを見るのは、サッカー観戦の醍醐味の一つ。前半35分メッシは、ディフェンダーにつかれながらも、どこをどう見ていたらそんなのが出せるのかという芸術的なラスト・パスを股抜きで通し、モリーナの先制ゴールにつながった。

  • ベスト・ドリブル:メッシ(アルゼンチン:対クロアチア戦)

 今大会の最も印象的な場面の一つ。ハーフウェー・ラインあたりからドリブルを仕掛け、大会屈指、いやNo1のCBグヴァルディオルを翻弄し、エリア内に侵入、アルバレスのゴールをアシスト。メッシの伝説のプレーの一つとなった。

 GKのスーパー・セーブも数多く見られたが、メッシのPKも止めたシュテフスキーのサウジアラビア戦でのPKセーブをベスト・セーブに選ぶ。PKを止めた後そのこぼれを詰めた強烈なシュートも弾き返した。

 1982年からW杯の決勝戦を見てきたが、これほどのゴールとドラマ、采配の妙とストーリーが詰まった試合はなかった。メッシとエムバペの二人が輝いたという意味でも今大会を象徴するような一戦だった。

 両国関係者以外は、これほど退屈な試合はなかったろう(特に前半)。両チームとも全くリスクをとらず、ピッチの真ん中でボールが回っている、金返せと観客は言いたくなる試合。森保監督がハーフタイムにブチ切れたらしいが、もっと早くブチ切れてもらった方が良かった。後半は、少しはましになったが、それでも凡戦。コスタリカは「敵陣ペナルティ・エリア内のボールタッチ2回で勝利」というW杯の記録を作る。これもある意味ひどい試合の証拠。

  • ワーストな行為(もはや「プレー」ではない):アルゼンチン対オランダでパレデスがオランダ・ベンチに強烈なキックでボールを蹴りこんだシーン。故意で、悪意があり、危険な行為であり、一発レッドでも全くおかしくなかったが、大会記録のイエロー・カードを連発していたマテウ主審は赤ではなく黄色のカードを出すにとどまった。もし、これで人数が一人減ったら、結果は変わっていたかもしれず、パレデスは最悪の戦犯に名指しされたろう。何を考えていたのか。