なでしこジャパン戴冠! その1:決勝戦レビュー

ワールドカップを振り返って、いくつかのエントリーを書きますが、まずは決勝レビューから。
 アメリカは、準決勝、準々決勝以上の出来で臨んでいたのではないでしょうか。序盤早々から日本は猛攻を受けました。アメリカはパワーだけではなく、パスもつながり、前線からのプレスも効いているし、サイドを切り裂いて決定的チャンスを作ります。シュートが枠に行っていれば、2〜3点入っていてもおかしくありませんでした。日本はボールを奪われるシーンが多く、日本らしさが出ません。前半戦の最大のヒロインはゴールポストとバーというような展開。ようやく、前半最後に日本も2,3回チャンスを作り、日本らしくなってきました。

圧倒的に攻め込みながら、ゴールを外し続けていくと流れが変わるのがサッカーの常ですが、決勝戦はそうもいきませんでした。アメリカは前半よりもギアを落としてきた感じですが、それでも日本は自陣でボールを回している時間が長く、なかなか前にボールを運べずに、押し込まれ気味。ボール・ポゼッションで上回っていると言っても、自陣でボールを回している時間が長いだけでした。ハーフライン辺りから一人独走で飛び出して日本に決定的なチャンスが来た時がありましたが、線審オフサイドの判定(リプレイを見ると誤審でした。しかし、この判定を除けば、決勝戦の審判は非常に上手だったと思います。)
前線で運動量の多かったFWの二枚替えは正解だったと思いますが、今大会永里がどうしても第2戦以降フィットしません(PK戦でもはずしました)。失点シーンは永里が持ち過ぎ後のロングボール一発で、度々スピードを見せつけていた敵の交代選手モーガンにDFが振り切られました。
日本は、失点シーン以降リスクを冒して前に行こうという形が出来て良くなってきました。得点シーンは、クリアのこぼれが宮間の前に出てきて生まれたもの。宮間の落ち着きは大したものでしたが、それにしても今日の幸運は全て日本側にあったとしか言いようがない感じです。
延長戦は互角の展開でしたが、またまたサイドを崩されて入れられたクロスにワンバックからとうとう決められてしまいました。日本選手4人にワンバック1人だったのですが、中央で圧倒的な存在感がありました。
あと15分で1点差。ワールドカップの決勝で最後まで諦めないというのは、当たり前で、別に賞賛には値しません。賞賛すべきは、延長後半になっても慌てず無理なロングパスを放り込むのではなく、自分たちのサッカーを信じて、パスをつないで、ビルドアップして、チャンスを作ろうとする落ち着いたプレーぶりでした。
澤の同点ゴールは、何度リプレイを見てもどこにどうボールが当たったのか、わかりません。どう当たれば、あんな角度でボールが飛んでいくのか?得点の決まったその状況だけでなく、シュート自体が神がかり的でした。
もうPK戦だと思っていたときに、まだドラマが待っていました。モーガンが抜け出しそうになったのを、岩清水が身体を入れてブロック、これがファウルを取られた上に、一発レッドの退場。本人は「あれはファウルかな」、と言っていましたが、レッドカードやむなしのファウルでした、しかし、モーガンをあそこで止めていなければ高い確率でゴールを決められていたでしょう。岩清水のファインプレーだと思います。南アW杯のガーナ対ウルグアイスアレスのハンドを思い出しました。
最後のピンチをしのいで、PK戦になりましたが、2度追いつかれたアメリカの方が精神的に追い詰められているように見えました。エンジンを組んだ日本の佐々木監督と選手の笑顔は、日本のリラックスを感じさせ、この時はPK戦日本有利を確信しました。あそこで笑顔を見せる佐々木監督には本当に大したものだと感じ入りました。
PK戦は、アメリカ選手に緊張がありありと見えていたのに対し、今日当たっていた海堀が敵選手の動きをよく見ていて、2本ストップ。歓喜の瞬間を迎えることができました。
優勝おめでとう。ただ、天邪鬼を言うと、日本は決勝戦には勝ちましたが、今日の成績はあくまで引分です。これで21敗4分。アメリカにはまだ勝てていないのです。
120分通じて、両軍クリーンなプレーで良くファイトし、多くのチャンスを作り、決勝にふさわしい真の熱戦でした。