かけはしメルマガ「アニメ文化外交」と将棋の海外普及

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「アニメ文化外交」と将棋の海外普及
▲日本のアニメやマンガが世界中で広く愛されていることは、最近かなり知られるようになってきましたが、まだまだその熱愛ぶりの真実が日本に正しく伝わっているとは言えません。ごく最近まで、この事実はあまり報道されてこなかったからです。
 日本のアニメやマンガのファンは、単にアニメ好き、マンガ好きと言うだけではなく、それらを通じて日本の様々な文化、風習などに関心と好感を持つようになります。私のスペインでの調査では、日本語を学ぼうとする学生のきっかけの7〜8割は日本のアニメやマンガでした。日本のアニメやマンガを原語で読みたいと考え、アニメやマンガを生み出した日本の文化全般を知りたいと感じるようになるのです。
▲世界各地のアニメ人気を知るための格好の一冊が5月に出版された「アニメ文化外交」(櫻井孝昌著。ちくま新書)です。
以下は「アニメ文化外交」の筑摩書房の紹介ページです
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480064875/
▲コンテンツメディア・プロデューサーの櫻井さんは、世界のいろいろな国を回って、日本のアニメの魅力について講演を行い、日本アニメファンの熱い歓迎を受けてきました。フランス、スペイン、イタリアといった先進国だけではなく、閉鎖的だと考えられていたサウジアラビアラオスカンボジアミャンマーといったメコン河流域の諸国に至るまで、若者が日本アニメへの愛を語ります。この本を読むと、その帯の惹句『世界はこんなに日本が好きだ!』が実感されます。
▲アニメと将棋普及の関係を考えてみると、最近では、外国人が将棋を指すようになったきっかけがアニメであることは珍しくはありません、というより将棋を知るための最大要因の一つがアニメかもしれません。
▲私の観察では、今、世界で最も人気のあるアニメは「NARUTO」だと思います(上記「アニメ文化外交」の中でもそのように記述されています)。NARUTO」は一言で言うと忍者マンガ(1999年から週刊少年ジャンプで連載中。2002年からアニメ化された)ですが、その主要キャラクターの一人・奈良シカマルの趣味が将棋で、マンガやアニメの中でもシカマルが将棋を指すシーンが出てきます。シカマルは IQ200という切れ者ですが、将棋がその知性を磨いたと受け取れるのか、「NARUTOのアニメを見て、将棋に興味を持った」と言う海外の若者をWeb上でよく見かけます。
▲この他に、最近では将棋そのものを題材にした「しおんの王」(連載終了。アニメ化もされた)、「ハチワンダイバー(マンガは連載中。テレビで実写ドラマ化された。)、「3月のライオン」(連載中)といった作品が次々と発表されています。「ハチワンダイバー」は2008年の「このマンガがすごい!(オトコ編)」で第1位になるなど、とても勢いのあるマンガです。作者の柴田ヨクサル氏は、佐藤康光九段や渡辺竜王との飛車落ち戦で勝利を収めたほどの実力者で、将棋世界誌にも出たことがあるので、かけはし読者の中にもご存じの方がいるでしょう。「3月のライオン」は、一部海外諸国でも人気のある「ハチミツとクローバー」で有名な漫画家・羽海野チカ作品と言うことで、これから人気がますます上がっていくでしょうし、いずれアニメ化もされるでしょう。
▲人気マンガ「ヒカルの碁」が子どもたちの囲碁人気アップに多大な貢献をしたように、これらのマンガは海外でも日本国内でも将棋人気を盛り上げるために大きな役割を果たしそうです。
▲世界各地で開催されている日本のポップカルチャー関連のイベントは、日本のマンガ・アニメ・ゲームが主人公ですが、2〜3日で万単位の集客を持つところは珍しくありません。欧州で最大のこの種のイベントはパリのジャポンエクスポで、15万人程度の人が集まりますが、万単位の集客を持つ同種イベントは欧州全体で年間おそらく100くらいあると考えられます。こうしたイベントの中には、日本の伝統文化を紹介するコーナーがたいてい設けられており、将棋や囲碁のコーナーを設けるところも最近増えてきました。何百万という人がイベント会場で将棋を実際に指されているところを見る機会ができているわけです。
▲上記「アニメ文化外交」の文中でも、将棋に触れられているところ(100頁以下)があります。世界中の様々な国で日本のアニメ・マンガ愛好サークルの若者が、将棋を指すようになっているのです。
▲日本のアニメやマンガの人気を考えれば、これに興味を持つ外国人を将棋の世界に誘導することが、将棋を世界に広めるためにはとても重要な戦略となることがわかります。