COP10(名古屋。生物多様性条約第10回締約国会議)−2

続き
『遺伝子資源に関するABS議定書』と『ポスト2010年目標』と『資金動員戦略』。3つの重要決定案を含む残りの決定案を採択するセッションは、予告された時刻よりかなり遅く始まりました。私は、午後11時前に総会会場に入り、ひな壇にある議長席の後ろに座りました。すでに会場は各国代表団やメディア、NGOでいっぱいです。『議定書』と『目標』、この2つの採択が名古屋のCOP10の成功・不成功を決すると会合の前から言われていたのですが、この時点に至ってもが採択できるのか自信がありません。いよいよ運命の総会最終セッションが午後11時過ぎに始まりました。
最初は問題の少ない決定案を採択していき、採択の度に議長である松本環境大臣が議長木槌を打つ音が会場に高く響きます。いよいよ、議定書の採択の時間になりました。EUは、議事進行に注文を付け、議定書、目標、資金戦略を同時に採択するように求めました。中南米の一部諸国は、別々に採択すべきだと主張し、会場は緊張します。議長は、「一つ一つ同意を得た上で、3つの同意が得られた時点で採択する」という妥協案を提示し、何とか前進を図ります。ABS議定書は同意が得られ、会場内から大きな拍手がわきました。一つのクライマックスです。しかし、まだ目標と資金戦略が残っています。これはまだ総会前に完全に文言の決着がついておらず、単に決定案を採択するだけでは済まず、作業部会の議長や小グループの調整者から決定案の内容について説明があります。未決着の部分を議長がどうするかについて、各国代表団の意見を聞きました。心配していた部分も妥協が成立しました。「これで採択してよろしいですが?」議長提案に対し、修正提起がありました。幸いこれはみんなが同意できる修正でしたので、修正を加えた後で、『目標』も同意取り付け。残るは資金動員戦略。かなり難しい説明が調整者からあり、妥協が図られて、これも同意と思われたのですが、議長が木槌を叩いた後でボリビアが修正を求めて異議を提起。この修正を入れると、すべてが壊れるかもしれません。どうするか、また緊張したやり取りが続きましたが、最終的には、議長がこの修正を入れて会場の同意を求めると、異論は出ませんでした。3つとも同意が得られたのです。会場はスタンディング・オベーション
議定書、目標、資金戦略の3つとも同意が得られたので、議長が事前に提案した通り、それぞれを正式に採択していきます。議定書の採択後には会場のほとんどの人が立ち上がり、拍手が鳴りやみませんでした。皆が採択を望んでいたのです。目標、資金戦略も無事正式採択。そのたびに大きな拍手が湧きます。
3つが各国のコンセンサスのもとに無事採択されました。正直なところ、想像していた以上の成功です。そのあと、地域グループなどを代表する各国の閉会スピーチなどがあり、松本議長が総会の終わりを告げる木槌を大きく振り下ろした時には午前3時を回っていました。議長など日本政府代表団、事務局や作業部会の議長らが抱き合って成功を喜びます。私自身は、この会議のごく一部に携わっただけですが、同僚の苦労を良く知っているので、会議の大成功に胸が熱くなりました。
総会が終わり、代表団室に戻り、若干の打ち合わせなどをして会場を引き上げたのは午前4時過ぎ、台風が近づく中、まだ空いている店を探して数名でラーメン屋にて祝杯をあげました。
30日(土)、疲れ果てて東京に戻ってきましたが、高い達成感のあったCOP10出席でした。